あなたのためのヘルスセミナー Vol.15

 健康を創る食生活とは?

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

第15回 激痛発作の痛風と戦うための食生活

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

痛風(高尿酸血症)は患者の90%以上が男性で、比較的中高年に多い病気です。原因は血中尿酸が増加して関節などに結晶化し沈着することで、血中尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。

数値が上がっても放置しておくと、ある日突然、足の親指の付け根などの関節が赤く腫れて痛みだします。それは激烈で、耐えがたいほどです。

ただし多くの場合、1週間から10日ほど経つと治まり、症状もなくなります。そこで油断していると同じような発作がまた起こってしまいますから、その前にきちんと対応する必要があるのです。

それを怠ると、今度は足首や膝の関節まで腫れはじめ、発作の間隔が次第に短くなってきます。やがてひどくなると、腎臓が悪くなったり尿路結石ができたりする場合もあります。放置はたいへん危険なことなのです。

この痛風には、プロシア国王フリードリヒ大王やフランスのルイ14世ら多くの王侯貴族が悩まされていたとされています。そのため古くから欧米では美食家、大酒家がかかる「帝王病」とか「ぜいたく病」などと呼ばれていました。痛風と食生活の関係はたいへん深い、ということは以前から理解されていたのです。

そもそも尿酸は人体内でプリン体という成分が分解してできます。そしてプリン体は肉類(とくにレバー) や甲殻類、ビールといった、「粗食」とは縁遠い食材に多く含まれているのです。

■アルカリ性食品の摂取を!

興味深いことに、日本では明治期まで痛風は「なかった」とする研究があります。実際に増えるのは戦後で、しかも

1960年代以降。これは明らかに食事内容が欧米化し、動物性タンパク質と脂肪分の摂取量が増えたことや、飲酒量の増加などによるものと考えられます。

わたしが実際に食養指導をした男性の中にも痛風の患者さんがいました。たとえば、当時58歳の会社経営者で軽度の肥満だったUさん。わたしが担当する5~6年前に痛風および高血圧症と診断され、血圧降下剤の服用と肉類を少なめにする、との指導を受けていました。

しかし右足のかかとが痛み出し、やがて歩けないほどの激痛に襲われました。その後も、足の親指やひざが痛み、便秘がちで食欲も減退。そこで松井病院・食養内科へ受診に来たのです。入院したUさんに食生活を聞くと、天ぷら、トンカツ、甘い菓子類が大好物で、あまり気にせず肉類を食べていたとのこと。

そこでまずプリン体を多く含む食品を避けるようにしました。さらに、尿酸は酸性になると結晶化しやすくなるので、野菜や海草などのアルカリ性食品を摂るようにしました。主食は玄米に変え、タンパク質は大豆製品で。青汁も飲用してもらいました。基本的には肥満防止に資する食事内容だったといえるでしょう。

尿酸排出促進剤と漢方薬も使った結果、入院後1カ月で便秘は収まり、関節痛も徐々に軽くなって、2週間後に退院に至りました。その後も食生活に注意し、元気に過ごしていると聞きました。食生活の改善こそ痛風撃退の最大の武器なのです。

Global E-Friends 2020.4

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