健康を創る食生活とは?
児玉陽子の正しい「食養」のすすめ
第16回 辛い貧血と戦う食事療法はコレだ!
児玉陽子 (食生活アドバイザー)
株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載
児玉陽子 略歴:
1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。
貧血とは血液中の赤血球の中にあって、酸素を全身の細胞に運ぶ働きをしているヘモグロビン(血色素)が、基準値より減少した状態をいいます。このヘモグロビンをつくるのが鉄分であることは皆さん、ご存じのとおりです。さらにもう一つ「フェリチン」というタンパク質も貧血に大きくかかわっています。
ヘモグロビンとフェリチンの関係は「現金」と「預金」のようなものでしょうか。体内の約70%の鉄分は赤血球の中にヘモグロビンとして存在し、日々使われ(支払われ)て、残りはフェリチンとして主に肝臓の細胞の中に貯蔵(預金)されています。そしてヘモグロビンが不足すると、フェリチンがその補充のために登場するというわけです。
日本人女性の場合、半数が貧血およびその予備軍とされているほど多数に上ります。症状は、だるさ・めまい・不眠・ 頭痛・動悸・息切れ・吐き気・食欲不振等々、多岐にわたっています。
こういう貧血症状のほとんどは、ヘモグロビンの材料である鉄分の不足がもたらすので「鉄欠乏性貧血」と呼ばれ、貧血全体の約7割を占めています。
原因は多岐にわたります。女性に多いのが継続的な出血である生理による貧血。出血量が多いと重度の貧血になってしまうことがあります。
さらに、潰瘍、痔疾(かいよう、じしつ)などによる出血や、妊娠・授乳などで鉄分の補給が間に合わないことなども原因に挙げられます。あるいは、若い女性に顕著なのですが、無理なダイエットによる食事制限がもたらす貧血もあります。
■実践した「貧血食」の内容
重度の貧血の場合、輸血や薬物療法などをおこないますが、多くは、鉄分補給を含む食事のあり方がカギを握っているといえるでしょう。以下では、わたしが松井病院の食養内科で実際に指導した食養方法を述べてみます。
三十代前半で妊娠八カ月の主婦が、全身の強い倦怠感や手足の極度の冷えなどを訴え来診しました。検査の結果、「妊娠貧血」と診断されました。鉄の吸収障害や尿タンパクも認められ、軽い腎障害のあることも分かりました。入院と同時に「貧血食」を指示しましたが、胎児の発育も考慮する必要があり、1日にエネルギーは1800kcalでタンパク質は70gとし、食塩は5gに制限しました。
さらにゴマを1食に付き25gほど使用し、ニンジン汁200mlも摂取するようにしました。ゴマは鉄分だけでなく、良質な植物性脂肪とカルシウム、ビタミンB1の補給にもつながる重要な栄養素です。そのほかに漢方薬も服用してもらいました。
すると手足の冷えが次第に薄らぎ、強い倦怠感も緩和するようになって体力が付き、無事に出産することができたのです。産後の経過もよく、赤血球・ヘモグロビンともに正常値に戻りました。
「貧血食」には鉄分を多く含む、以下のような食材が不可欠です。煮干し、ゴマ、レバー、卵黄、海草、シジミ、カキ、緑黄色野菜など。そしてこれらの食材を、ほかの食材と共にバランスよく摂ることが肝要です。貧血と戦う最強の武器は、「正しい食養」なのです。
Global E-Friends 2020.5
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