健康を創る食生活とは?
児玉陽子の正しい「食養」のすすめ
第18回 もはや“国民病”か? 糖尿病と戦う方法!
児玉陽子 (食生活アドバイザー)
株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載
児玉陽子 略歴:
1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。
今回は糖尿病を取り上げてみます。厚生労働省の2018年「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」は男性18.7%、女性9.3%に上るとしています。
総務省の今年6月1日現在の人口概算値は男性6,129万人、女性6,464万人ですから、それぞれの比率をかけると1,146万人と601万人に達し、合わせて何と1,747万人! 糖尿病は、もはや国民病と言っても差し支えないでしょう。
ご存じのとおり、糖尿病は膵臓から分泌されるインシュリンというホルモンが不足・低下することで血糖値の上昇を招く病気です。
さらに糖尿病は、インシュリン依存型(I型)と同・非依存型(II 型)に分かれています。1型は比較的、若年層に多く、生命維持のためインシュリン注射が欠かせません。II型はもっとも普通にみられる糖尿病で、40代以上に多く、緩慢に発症し肥満を伴うことが一般的です。
もともと糖尿病になりやすい素質を持った人が、この病気の誘因となる過食、美食、運動不足といった生活をおくっているとてきめんです。なぜなら、食事量(カロリー)が多いとインシュリンの消費量が高くなり、肥満であるほどインシュリンの働きが鈍くなって、その不足・低下を招くからです。
放置しておくと、網膜症、狭心症、心筋梗塞といった血管障害や、糖尿病性昏睡、神経障害など、命に係わる重篤な合併症を引き起こします。糖尿病は、油断ならない病気なのです。
■食養で克服した72歳男性
ここで、松井病院・食養内科で指導をしたことのある患者さんの例を紹介してみましょう。身長160cmで体重60kgとやや小太りの男性 (72歳)。彼が糖尿病を発症したのは40代半ばで、以降、インシュリン注射と経口の糖尿病薬療法を実施してきました。また食事療法も実行していたと言います。
しかし症状は好転せず、入院時の血糖値は300mg/dl以上に達し、基準値の倍を上回っていました。そこで血糖値を下げて、かつその数値を維持するための食事療法を開始しました(補助手段として 運動療法も併用)。主な内容は、過食を避け摂取エネルギーを制限し、同時に栄養のバランスを保つことです。
具体的には、精白米を未精白米に切り替えて糖質を減らし、タンパク質は主に植物性食品である大豆製品から摂るようにしました。また動脈硬化を引き起こしやすいので動物性脂肪は極力避け、調理には不飽和脂肪酸が豊富な植物性油を用いました。ビタミンとミネラルは野菜と海草から摂取するように努めました。
入院以来20日間、このような食事療法を続けた結果、血糖値は下がり、コントロールできるようになって退院しました。以後、摂取エネルギーを一日1,600kcalまでに、との指示を良く守って薬剤も不要なまま過ごしていると聞きました。
わたしがつくづく思うのは、糖尿病ほど、食養の重要性を如実に示す病気はない、ということです。もちろんほかの病にとっても食事療法はとても大切です。でも糖尿病の場合、その治癒の可否は、ほぼ食事内容にかかっていると言ってもいいくらいなのです。
Global E-Friends 2020.7
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