健康を創る食生活とは?
児玉陽子の正しい「食養」のすすめ
第19回 食事療法で便秘&下痢に立ち向かう!
児玉陽子 (食生活アドバイザー)
株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載
児玉陽子 略歴:
1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。
便秘と下痢と言えば、方や“出なくて”苦しみ、こなた“出過ぎて”苦しむ、という正反対の症状を示しています。そこで今回は両症状をまとめて取り上げ、食養でどう対処すれば良いかを考えてみます。まずは便秘から。
便秘の要因は大きく分けて二つあります。一つは症候群便秘と呼ばれ、腸狭窄や直腸ガンといった腸の病気に由来します。もう一つは、一時的または慢性状態の便秘で、前者は旅行先など環境や食事内容の変化等によって引き起こされ、後者は習慣性(常習性) 便秘とも呼ばれて、 大腸の機能異常が要因となります。
機能異常とはつまり、大腸の運動が減退して腸の内容物(大便)が長く停滞し、固く太くなって腸内移動ができなくなる症状のことです。これが習慣性便秘の大部分を占めていて、多くは下腹部に膨満感を覚えますが、長く続くと食欲不振や頭痛、倦怠感を訴える場合もあります。
習慣性便秘にはほかにも過敏性腸症候群の人に見られる「けいれん性便秘」と呼ばれる症状もありますが、ここでは省略します。
浣腸や下剤に頼らず、食養で便秘に対峙する方法は以下
①主食を、腸のぜん動運動を盛んにする繊維分を多く含む未精白米にする。②繊維分や、ビタミン、ミネラルを多く含む野菜・海草を積極的に摂る。③便を柔らかくし腸管の滑りを良くするゴマ油やオリーブオイル、亜麻仁油といった植物油を使う。④繊維分をほとんど含まず、ぜん動運動を緩慢にする肉類は避ける。⑤還元水などの水分を十分摂る。⑥身体を冷やす果物やぜん動運動が鈍る砂糖を摂りすぎないようにする。
■下痢のさいの食事療法
さてもう一方の下痢です。これは、大腸の運動が高じて腸内残存物が異常に早く通過するため、水分が腸内で吸収されず大便の水分含有量が増えて、泥状または水様状態となることです。急性と慢性があり、排便回数が一日に何十回にも及ぶこともあって、たいへん辛い症状です。
原因はさまざまです。果物や生野菜、消化に悪く脂質の多い食品やアルコール飲料、香辛料、砂糖等の多量摂取が引き起こすことがあります。そのほか、腸内での食べ物の異常発酵や、暴飲暴食、食中毒も要因になりますし、アレルギー性や神経性、さらに冷えによる下痢なども生じることがあります。
下痢が引き起こす症状も、発熱、倦怠 感、吐き気、腹部の痛み等々、実に様々ですが、高じている大腸の運動を正常に戻すためには、何といっても食生活の改善
が肝要です。
下痢で怖いのは、体液と様々なミネラル分が失われること。そこでこれらの補給が重要になります。野菜類は生を避け煮てから摂ることが大切です。油脂類では揚げ物や炒め物は避け、できるだけゴマ料理で摂取することが肝心です。
主食は未精白米をお勧めします。繊維分が多く下痢に不適当と思われるかもしれませんが、よく噛んで食べると、唾液の中のでんぷん分解酵素が働いて消化吸収を助けてくれます。食事療法とは別に、必要に応じ医師の管理下で実施する「絶食療法」という手段もあることを付け加えておきます。
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