産経新聞2021年12月15日水曜日に掲載されたコラムを文字起こししたものです。
その6
皆から応援される存在に
人生を切り開くあいさつ
「あいさつ」「プラスの 言葉」「時間を守る」
これは、私の子育てでも軸にしてきた大切なことです。 この3つが身についた3人のわが子たちが、さまざまな面で好ましい結果になっているからでもあります。今回は「あいさつ」についてお話ししたいと思います。
東京五輪期間中のこと。日本各地の警察官が連日、大会会場や選手村を警備してくださっていました。璃花子はそんな警官の方々に「いつも警備ありがとうございます」とお礼を言って いたようです。 後にある警察本部から「世界トップレベルの選手が競技中にもかかわらず、会場警備の警察官に心温まる励ましの言葉を頂き、本当にありがとうございました。猛暑の中でも旺盛な士気のもとで活動することができました」というお礼のお手紙を頂戴しました。
あいさつは当たり前のことですが、誰でもできることではありません。私の教室では、まだ言葉を話さない小さなうちからあいさつを教えます。 まずお母さんがあいさつをして、子供に手本を見せることが大切です。ちょこんと頭を下げることから始まり、意思をもってその動作をしているか、「おは…」だけでもよいのです。
もう少し大きな子であいさつをしようとしない子供には、お母さんだけ中に入っていただきます。子供はあいさつするまで中に入ることができないので、必ずするようになります。
周りの人は、その子供がいい子であるかの第一印象を、ほとんどがあいさつのできるかどうかで決めるしかありません。その子の人間性がいくら高くても、もじもじしていては第一印象が低く、もったいないことです。
トップアスリートのような心身ともに鍛錬されている人たちは皆あいさつができるかというと、どうもそうではありません。それは親のしつけの中で習慣化されていなかったことだけではなく、指導者の責任も考えなければいけないと思います。子供の学校関係や水泳の関係の親御さんもさまざまで、中にはあいさつのできない親御さんもいらっしゃいます。
私は仕事柄、積極的にごあいさつさせていただきます。先生方はもちろんですが、子供の先輩の親御さんにも失礼のないように気を付けていました。親の行いで、子供の足を引っ張るわけにはいきません。わが子がみなさんから応援されるかどうかに関わる大切なことだからです。
あいさつは、小さい頃であれば簡単に身につけることができます。習慣ができさえすればどんなときでも誰にでも自然に言葉が出ますし、あいさつが子供の人生を明るい方向に切り開いていくように思います。

子供たちにサインする池江璃花子選手
池江美由紀(いけえ・みゆき)
東京都出身。3人(長女、長男、次女)の子育てをしながら、1995年から幼児教室を経営。次女が小学校に上がる前に離婚し、ひとり親で3人を育てる。東京経営短期大学こども教育学科特別講師。
初の著書『あきらめ ない「強い心」をもつために』(アスコム)刊行。
池江璃花子(いけえ・りかこ)
2000年7月4日生まれ、21歳。
3歳で水泳を始めた。2016年リオデジャネイロ五輪は100mバタフライ5位。100、200m自由形と50、100mバタフライの日本記録保持者。 19年2月に白血病と診断された。日大、ルネサンス所属。