池江流子育て『どんな人から生まれても』

産経新聞2022年1月12日水曜日に掲載されたコラムを文字起こししたものです。

その8

心でつながる母と胎児

産む力と、生まれようとする力

結婚してしばらくすると、子供を持ちたいという気持ちになり、たくさんの幼児教育の本や出産に関する本を読みました。 そして妊娠すると、ますます熱心に出産の勉強をしました。

私は胎教の本や多くの情報から、胎児の心はお母さんとつながっていて、言葉はわからなくてもその思いが伝わるということを知りました。ですから、いつも心穏やかに過ごし、おなかの子供に向かって話しかけるようにしました。

ある本には、こんなことが書かれていました。「おなかの赤ちゃんに、お母さんが楽なように、そしてあなたも楽なように、するっぽんっ!と生まれてきてね」「お父さんとお母さんの お仕事のない日に生まれてきてね」「3000gぐらいで生まれてきてね」と語りかければそのように生まれてくると。ですので、私は毎日おなかの赤ちゃんに向かってそう語りかけました。

そのかいがあってか、3人の子供たちはいつも親の仕事の支障のない日に生まれてきました。 長男は3800gありましたが、長女と次女の璃花子は3000gと少しで生まれてきました。

璃花子を妊娠して8カ月ぐらいのころには、仕事と上の2人の子の育児で忙しく、璃花子は逆子になったり戻ったりとおなかの中でグルグル動いていました。逆子は、お母さんの意識が赤ちゃんにあまり向いていないと起こりやすいものです。

璃花子は自宅出産でしたので、健診も自宅でした。助産師さんが健診したときもやはり頭が上でしたので、手技で赤ちゃんの頭を下に戻し、さらしで動かないように固定してしまいました。しばらくそのままで、お風呂もさらしを巻いたまま入るように言って帰られたのですが、私は苦しくてさっさとさらしを取ってしまいました。

そしておなかの中にいる 璃花子に向かって「あなたも苦しいし、ママも苦しいの。そこでグルグル回ってもいいけど、生まれるときは頭からね。助産師さんが来たときも頭を下にしておいてね」と言ってやると、それから健診の時はぴたっと頭を下にしていました。

このことからも、赤ちゃんはお母さんと心と心でつながっており、お母さんの思いや言葉を理解している。のだとさらに確信しました。

私は自分の産む力と、赤ちゃんの生まれようとする力を大切にする母子の負担の少ない自然出産を望んでいました。それは何よりも、お母さんと強い絆でつながっている赤ちゃんの心を大切にする産み方だと思うからです。

助産院で産む水中出産は、医師がおらず、助産師さんに介助してもらう自然な産み方です。もちろん何かの際は病院と提携していますが、そうならないために健康に留意し、妊娠中のトラブルが起こらないように細心の注意を払いました。病院や先生を頼って産ませてもらうのではなく、わが子を自分の力で産むという強い思いが湧きました。

もちろん、出産は何が起こるかわからない命がけのものです。どのような産み方であっても、赤ちゃんと心の中で強い絆を結んでいることが大切だと思います。

私はおかげさまで何事もなく、長女と長男は助産院で出産。そして3番目の璃花子は、2人を自然に産んだ経験から、自宅のお風呂で出産に臨むことができました。


誕生から約10日後、出産に立ち会った助産師さんに抱かれる池江璃花子選手。
3きょうだいはおそろいの生地で作られた洋服に身を包んでいる

池江美由紀(いけえ・みゆき)

東京都出身。3人(長女、長男、次女)の子育てをしながら、1995年から幼児教室を経営。次女が小学校に上がる前に離婚し、ひとり親で3人を育てる。東京経営短期大学こども教育学科特別講師。

初の著書『あきらめ ない「強い心」をもつために』(アスコム)刊行。

池江璃花子(いけえ・りかこ)

2000年7月4日生まれ、21歳。

3歳で水泳を始めた。2016年リオデジャネイロ五輪は100mバタフライ5位。100、200m自由形と50、100mバタフライの日本記録保持者。 19年2月に白血病と診断された。日大、ルネサンス所属。

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