池江流子育て『どんな人から生まれても』

産経新聞2022年2月2日水曜日に掲載されたコラムを文字起こししたものです。

その11

親のような指導者選びを

人間形成の一端担う習い事

結婚を機に仕事を辞めてしまったので、子供を持ったときは働いていませんでした。子育てのために幼児教育に興味を持っていたので、それを仕事にしたのが子供の習い事の始まりです。

幼児教育の著書を多く読み、講演を聞き、能力開発の教室を開校したのは長女が1歳4カ月のころでした。 幼いうちから落ち着いてイスに座ってレッスンを受ける。人の話を聞く。 集中して物事に取り組む。記憶力を伸ばす。学習習慣を持つ。基礎学力を育てる・・・・。これらのことを身につけさせてから子供たちを育てたので、他の習い事でも吸収するスピードが速かったと思います。

璃花子の場合は0歳から私の幼児教室(英語クラスを含む)に通わせ、2歳ごろから姉が通っていたピアノ教室で音楽を利用した教育法「リトミック」、3歳から水泳を始めました。小学1年からは習字を始め、水泳が毎日になった高学年からは週に何度も通わなければならない学習塾には行けないので、珠算塾に通っていました。

私の習い事に対する考えは、人間形成の一端を担う関わりをしてもらうということです。璃花子の場合、水泳が人生のようになってしまいましたが、ほとんどの習い事の場合、その道で生きていくものにはなりません。 あくまでも人として成長していく過程での学びの場であると思います。

努力を怠らず、うまくいかない時も諦めない気持ちを持ち、人とのコミュニケーションを学ぶ。こうしたことに一番大切なのは、先生の指導の仕方や人間性だと思います。子供を褒めて認めて愛し、時には叱り、他の子供と比較せず、成長段階で学ぶべき常識や道徳を教え、人間力を育ててくれる先生に見てもらうことです。

水泳は進級のたびに指導者が変わりますが、選手コースになると、ほぼ同じコーチでした。大きい声で子供を叱ったりすることが度々でしたが、私はコーチとよくお話をして信頼関係がありましたので、コーチの指導の仕方に口を出すことは全くありませんでした。コーチに娘をかわいがっていただきたかったので、親としても愛されるようにしていました。

私はその指導者のやり方に不満があるのなら、そこをるべきだと思います。親としてやり方に納得ができないのであれば、納得できる指導者を探せばいいのです。 自分の主張をコーチに押し付けたり、ケチをつけたりしても、間に入る子供がつらい思いをするばかりです。

10歳の頃の池江璃花子選手(左から2人目)と
リレーのメンバーと清水桂コーチと共に。

私は幼児教室を経営しているので、習い事の指導者の立場でもあります。私はお子さんを見るのと変わらない比重で親御さんも見ています。小さいお子さんを指導するということは、その後ろにいる親御さんもご指導しなければ身につきません。ですから入会時には ご両親にガイダンスを受けていただき、大切なお子さんがこれから受ける教育の基礎理論はどういう内容なのか、私たち指導者はどういう気持ちで、どういった指導方針で人間性を育てるのかというお話をします。「自分が親ならこうしてほしいという信頼関係が習い 事を支える要ではないかと 思うので、安心して通っていただくためにとても大事なことだと思っています。

東京五輪出場が決まり、開かれた祝福会での
池江璃花子選手と清水コーチ

習い事の指導者は、他人として親のように子供を育ててくれる人を選ぶといいと思います。親の役割は指導者と子供の間を取り持ち、子供が上手に学べる環境づくりに徹することです。

池江美由紀(いけえ・みゆき)

東京都出身。3人(長女、長男、次女)の子育てをしながら、1995年から幼児教室を経営。次女が小学校に上がる前に離婚し、ひとり親で3人を育てる。東京経営短期大学こども教育学科特別講師。

初の著書『あきらめ ない「強い心」をもつために』(アスコム)刊行。

池江璃花子(いけえ・りかこ)

2000年7月4日生まれ、21歳。

3歳で水泳を始めた。2016年リオデジャネイロ五輪は100mバタフライ5位。100、200m自由形と50、100mバタフライの日本記録保持者。 19年2月に白血病と診断された。日大、ルネサンス所属。

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