健康なカラダは、すべて腸から始まる

カリスマ胃腸専門医、江田証著

YouTube 本要約チャンネル『新しい腸の教科書』から

1限 心と身体のあらゆる問題は腸にある
2限 腸がよみがえる食生活
3限 腸を整える生活習慣

1限

心と身体のあらゆる問題は腸にある

一般の「腸」のイメージ

食事で食べた物の消化吸収する所

腸は全身に大きな影響を与えている。

腸は全身の臓器と繋がり、お互いに影響を及ぼし合っている

腸は外界と身体の中を繋ぐハブ

心と身体のあらゆる問題は腸に通ずる

脳と腸「迷走神経」

うつ病患者 便秘や下痢が多い

腸内細菌が生み出した有害物質  認知症

腸内環境の悪化が脳に影響して心の問題を引き起こす→身体の不調や病気にも深く関与している

腸についての最新知識

  • 脳管神経
  • 腸内フローラ
  • 腸は免疫とセロトニンの中心

①脳管神経

1億個の神経細胞→第2の脳

腸←迷走神経→脳

脳腸相関

双方向ネットワーク

腸は多くの臓器と複雑にコミュニケーションを取り連携している

腸→脳→心臓  心拍数上下、血流コントロール

腸→脳→肺    呼吸 浅、深

腸→脳→腸    腸の蠕動運動

体内機能のバランス維持

②腸内フローラ

腸内細菌  100兆個

共生関係

食物から取る餌に、発酵することで増殖する

様々な代謝物を生成する→人体の機能に影響を与える

腸内フローラ

腸内細菌が腸の粘膜にビッシリと住んでいる状態 腸内細菌叢

腸内細菌の総重量 1.5㎏

善玉菌   2割

日和見菌  7割

悪玉菌   1割

悪玉菌が優勢になると

善玉菌   1割

日和見菌  7割

悪玉菌   2割

バランスが逆転

③腸は免疫とセロトニンの中心

全身の免疫細胞の約6割が腸に集まっている

腸は身体の玄関口

腸内細菌のミッション  外敵を玄関で塞ぎ止めること

腸内に病原菌が侵入すると、腸壁の内部にいる免疫細胞が危険を察知して、メッセージ物質を放出する。

メッセージ物質を受け取った腸壁の細胞が病原菌を撃退する。

幸せホルモン セロトニンの9割が腸で作られる

セロトニン 幸福感、ポジティブ

腸管の蠕動運動を活発にする

自律神経のバランスを活発にする

心を前向きにしたりする作用がある

興奮物資のノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑える  イライラを起こしにくくなる

腸内のバランス

幸福で安定した精神状態に大きく影響している

2限

腸がよみがえる食生活

身体に良い影響を与える善玉菌はバランスの良い食事を好む

食べ物→腸→乳酸・酪酸・ビタミンB群

  身体に有益な物資を作り出す

身体に悪い影響を与える悪玉菌は高脂質や高カロリーの偏った食事の過剰摂取が好物

腸内細菌は人が生まれてから死ぬまで腸内で食べ物を餌として生きている

食事は腸内細菌を善にも、悪にも変える大事な要素

健康な腸を育てる4大食品

  1. 発酵食品
  2. 水溶性食物繊維
  3. オリゴ糖
  4. EPAとDPA

1.発酵食品

善玉菌を刺激して腸の蠕動運動を活発化

納豆、ヨーグルト、味噌、醬油、酢、塩糀、ぬか漬け、キムチ、甘酒、チーズ、ワイン、鰹節

2.水溶性食物繊維

食物繊維は加齢と共に、乱れがちな腸内環境のバランスを整えてくれる

善玉菌が水溶性食物繊維を分解した時に作り出される短鎖脂肪酸の脂肪燃焼効果にも最近注目が集まっている

水溶性食物繊維を多く含む食品

海藻、ごぼう、オクラ、モロヘイヤ、かぼちゃ、そば、納豆、ブロッコリー、etc.

ブロッコリー

スルフォラファンは強い抗菌作用があり、悪玉菌を減らして腸内環境を整えてくれる

加熱しても栄養素が壊れにくく、様々な料理に活用できる

3.オリゴ糖

オリゴ糖はビフィズス菌などの乳酸菌の餌となって善玉菌を増やしてくれる

オリゴ糖は悪玉菌の餌にならないので、効率良く善玉菌だけを増やすことができる

オリゴ糖が含まれる食品

4.EPAとDHA

EPA、DHAは体内で産生出来ないので、食事から取らなくてはならない

腸内の炎症も鎮める善玉菌が増えやすい

腸内環境を整えるだけでなく、潤滑油として便の通りを良くする効果が期待できる

EPAやDHAが多く含まれるもの

青魚、鮭、亜麻仁油、etc.

缶詰と野菜

魚は皮ごと食べる

亜麻仁油は加熱せず、サラダ、野菜にドレッシングとしてかける

3 限

腸を整える生活習慣

  1. 空腹の時間を作る
  2. 睡眠を改善する
  3. 最高のトイレ習慣
  4. ゆらぎを取り入れる
  5. 腸活スクワット

1.空腹時間を作る

腸は空腹を感じる 食後4時間程で腸のお掃除タイムに入る

空腹時間を作ることが重要

お掃除タイムが取れないと、腐敗した食べ物が腸内に溜まってしまい

悪玉菌が増える要因となる

腸は睡眠時間でも働いている

食事は20時までに済ませるのがベスト

4時間後の深夜0時には、掃除を始めることができる

遅い時間に夜食を食べると、腸は深夜労働となり

翌日以降の活動を妨げる原因になる

2.睡眠を改善する

睡眠は大事なお掃除タイム

浅い睡眠は自律神経が乱れ腸の動きが悪くなる

睡眠に入る前に入浴 リラックスタイム

入浴  腸を温める

     38℃半身浴 副交感神経が高まり腸がリラックス

3.最高のトイレ習慣

必ず朝食を取る 腸にスイッチが入り1日のリズムが保てる

便が出なくても毎朝必ず座る  排便リズム

4.ゆらぎを取り入れる

現代人の多くは一定の室温に保たれたオフィスの中でデスクに座り、人工的な光や音に囲まれ生活している

腸にとってはこれが大きなストレス

ストレス過多

ゆらぎ 自然界の動きのあるもの

風、日光 換気

5.腸活スクワット

スクワットの上下運動が腸にも良い影響を与えてくれる

スクワットをすると大腸近くの筋肉を鍛えるため便を押し出す排便力が向上する

運動することで腸に身体の振動が伝わり腸管の動きを活性化する

筋肉から分泌される マイカイオンというホルモンが大腸ガンの予防に良い

筆者のメッセージ

筆者は私たちにお腹の不調を許すなと言っています。

お腹の不調のせいで青春を台無しにしたり、勉強も恋愛も上手くいかなかったりと辛い思いをしてきた人は多いと思います。

健康な人は分からないかもしれませんがお腹のトラブルで悩んでる人はいっそ死んでしまいたいとまで思っている人もいます。

何十年も下痢に悩まされていたりガスが多く座っているのも辛いという人は結構いるのです。

例え生命の危機がない腹痛やガス、便秘、下痢であっても本人にとっては切迫した辛い問題であります。

医師はガンなどの目に見える病気を必死に早期発見しようとしてきました。それによって目覚ましい成果をあげてきました。

しかし、目に見えない病気を軽視してきたことも否めません。

この医師と患者の間の意識のずれを解消したいと願って、筆者は本書を執筆されたそうです。

あなたのためのヘルスセミナー Vol.23

 健康を創る食生活とは?

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

最終回 “健康長寿”のための食生活の基本とは!?

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

いよいよ今回が連載の最後の回となりました。長い期間に渡り、「食養」に関する歴史、理論、実践等について述べる機会を与えてくださったことに感謝を申し上げます。

そもそも「食養」とは、「日々の食事を通じた病気予防と治療の方法」を意味します。連載の最後に当たり、この食養に関する原理原則を述べて締めくくりたいと思います。

食生活アドバイザーとしてのわたしの原点は、日野厚医学博士と共に働いた松井病院食養内科にあります。そこでわたしは、日野博士の提唱する“食養論”に則った食事療法を患者さんに日々、実践していました。

その基本姿勢は、一人ひとりの患者さんの症状、体質、年齢、それまでの食事傾向等々、いろいろな要素を検討して食事内容を決め、実際に供する、というものでした。その具体的内容や効果は、2019年12月号の連載第11回「肝機能障害」以降、前号までの連載の中で、病気別に記述してきたとおりです。

松井病院食養内科で積み重ねたこうした経験を基にして、わたしは日野理論に自分なりの修正を加え、現在、提唱している食養論を確立することができました。その本質は、ズバリ、「以前の日本食に帰ろう!」です。

■手本は「以前の日本食」に

日本では1960年代の高度成長期以降、食生活に大きな変化が生じました。ひと言でいうと著しい「西洋化」です。たとえば肉類や乳製品の摂取量が増えるなど、高カロリー、高タンパク、高脂肪で糖分、塩分過多の食品が普通の家庭でも日常的に食べられるようになりました。こうした食事内容が、いわゆる生活習慣病(当時は成人病と言いましたが)の増加を招いたとされています。

加えて食品添加物などの合成化学物質の摂取や、農薬と化学肥料を大量使用した農作物の影響を疑われる事態も生じました。その典型例がアトピー性皮膚炎の増大でしょう。

そこで見直されてきたのが「以前の日本食」なのです。わたしが提唱している食養も、それを基本としています。具体的には、主食を玄米とし、砂糖は少々かつ薄塩・薄味で、タンパク質は小魚・白身魚や豆腐などの大豆食品から摂取し、野菜(とくに緑黄色野菜) や海草を多く摂る――という内容です。

加えて、土地と人間の切り離せない関係(身土不二しんどふじ)を重んじて地産地消を心がけ、「一物全体」の考えから、野菜は根も葉も捨てず魚は皮も骨も内臓も食べて、強い香辛料や刺激物を避ける、といったことも大切です。食べ方では何と言っても「よく噛み腹八分にすること」が肝要です。飲用や調理には「還元ウオーター」が最適ですね。

こうした食生活を実践することで、皆さんはきっと「健康長寿」を手に入れることができるでしょう。参考にしていただければ幸いです。

Global E-Friends 2020.12

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 健康を創る食生活とは? 『児玉陽子の正しい「食養」のすすめ』
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あなたのためのヘルスセミナー Vol.22

 健康を創る食生活とは?

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

第22回肥満解消のための食生活はこれだ!

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル

広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

「肥満」といえば、病気から生じる一部のケースを除く大部分が、食べ過ぎ=脂肪の過剰蓄積によって引き起こされます。そこで食生活の改善こそが最良の解決策であり、まさに食養の出番なのです。

肥満を計る指数で一般的なのが、皆さんご存知のBMI (Body Mass Index) ですね。計算式は、[体重(kg)]- [身長(m)の2乗]です。皆さんもご自分の身長・体重から計算してみてください。日本では日本肥満学会が18.5~25未満なら普通で、それ以上は肥満と分類しています。

改めて肥満の原因を述べてみますと、糖質・脂肪・タンパク質など食物で摂取するエネルギーが、消費エネルギーを上回るために起こります。このように過食と肥満は密接な関係にありますから、何といっても、正しい食生活こそが肥満防止(または減量)の決め手なのです。

肥満が怖いのは、身体に負担がかかり、多くの病気を引き起こすためです。実際、肥満の人たちの多くが、糖尿病や痛風、肝硬変、胆石などから心臓病、脳出血といった重篤な病まで、何らかの異常をきたしています。そこで、あるべき食養を以下に示してみました。

まずは「食べ方」ですが、間食や夜の大食は厳禁です。早食いやまとめ食いも避けましょう。味付けは全体的に薄くする方が、賢明です。

■「GI値」の低い食品を!

食事内容としては、できるだけ「グリセミックインデックス(GI値)」の低い食物を摂るように心がけましょう。GI値とは「食品ごとの血糖値の上昇度合いを表現する数値」で、通常、GI値「60」を目安とし、それ以上の食品は避けた方が良いとされています。

たとえば精白米は80以上ありますが、玄米は55程度、という具合で、なるべく精白した食品は避けましょう。それらは必要なビタミン、ミネラルが取り除かれて栄養価が少なく、血中の中性脂肪を上昇させやすいという性質もあります。

また、上白糖などは100を超える高いGI値ですから、甘味食品には十分注意が必要です。

一方、未精白食品は栄養素が多く、繊維にも富んでいるため咀嚼回数が増えて満足感を味わうことにもつながってお勧めです。

大切な栄養素のタンパク質は肉や卵、魚類からよりも大豆製品などから多く摂ることを勧めます。ビタミン、ミネラルは、エネルギーが低い野菜や海草類で十分に摂取しましょう。

最後に減量を始めるに当たって注意すべき点を。高度の肥満であっても、最初から急激に熱量を低下させることは危険です。徐々に減量に体を慣らしていくようにしましょう。また、アルコール類は食欲をそそり糖分の摂取にもつながるので、禁酒が最適です。

努力して標準体重に戻ったら、今度は労働と運動の量も踏まえた適正カロリーを維持していきましょう。

Global E-Friends 2020.11

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あなたのためのヘルスセミナー Vol.21

 健康を創る食生活とは?

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

第22回 肥満解消のための食生活はこれだ!

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

「肥満」といえば、病気から生じる一部のケースを除く大部分が、食べ過ぎ=脂肪の過剰蓄積によって引き起こされます。そこで食生活の改善こそが最良の解決策であり、まさに食養の出番なのです。

肥満を計る指数で一般的なのが、皆さんご存知のBMI (Body Mass Index) ですね。計算式は、[体重(kg)]- [身長(m)の2乗]です。皆さんもご自分の身長・体重から計算してみてください。日本では日本肥満学会が18.5~25未満なら普通で、それ以上は肥満と分類しています。

改めて肥満の原因を述べてみますと、糖質・脂肪・タンパク質など食物で摂取するエネルギーが、消費エネルギーを上回るために起こります。このように過食と肥満は密接な関係にありますから、何といっても、正しい食生活こそが肥満防止(または減量)の決め手なのです。

肥満が怖いのは、身体に負担がかかり、多くの病気を引き起こすためです。実際、肥満の人たちの多くが、糖尿病や痛風、肝硬変、胆石などから心臓病、脳出血といった重篤な病まで、何らかの異常をきたしています。そこで、あるべき食養を以下に示してみました。

まずは「食べ方」ですが、間食や夜の大食は厳禁です。早食いやまとめ食いも避けましょう。味付けは全体的に薄くする方が、賢明です。

■「GI値」の低い食品を!

食事内容としては、できるだけ「グリセミックインデックス(GI値)」の低い食物を摂るように心がけましょう。GI値とは「食品ごとの血糖値の上昇度合いを表現する数値」で、通常、GI値「60」を目安とし、それ以上の食品は避けた方が良いとされています。

たとえば精白米は80以上ありますが、玄米は55程度、という具合で、なるべく精白した食品は避けましょう。それらは必要なビタミン、ミネラルが取り除かれて栄養価が少なく、血中の中性脂肪を上昇させやすいという性質もあります。

また、上白糖などは100を超える高いGI値ですから、甘味食品には十分注意が必要です。

一方、未精白食品は栄養素が多く、繊維にも富んでいるため咀嚼回数が増えて満足感を味わうことにもつながってお勧めです。

大切な栄養素のタンパク質は肉や卵、魚類からよりも大豆製品などから多く摂ることを勧めます。ビタミン、ミネラルは、エネルギーが低い野菜や海草類で十分に摂取しましょう。

最後に減量を始めるに当たって注意すべき点を。高度の肥満であっても、最初から急激に熱量を低下させることは危険です。徐々に減量に体を慣らしていくようにしましょう。また、アルコール類は食欲をそそり糖分の摂取にもつながるので、禁酒が最適です。

努力して標準体重に戻ったら、今度は労働と運動の量も踏まえた適正カロリーを維持していきましょう。

Global E-Friends 2020.11

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あなたのためのヘルスセミナー Vol.20

 健康を創る食生活とは?

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

第20回 慢性胃炎を克服するための食生活とは

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

今回は胃の病気の中で最も多い「胃炎」を取り上げてみます。胃の粘膜に炎症が起きた状態が胃炎で、急性と慢性があります。急性は、食べすぎや飲みすぎ、ストレス、タバコの吸いすぎなどの生活習慣が主な要因です。症状は胃痛、吐き気、下痢などで、ひどくなると嘔吐や吐血、下血を伴う場合があります。

なお、ストレスが引き起こすケースを「神経性胃炎」とする場合があります。

慢性の場合、原因の約8割が胃の中に生息するピロリ菌と呼ばれる細菌の働きで、その他、薬の副作用によっても引き起こされる場合があります。

ピロリ菌は胃中の強力な酸の中で生きている菌で、胃酸から身を守るため常に出し続けているアンモニアが、胃の粘膜を傷つけ、慢性胃炎を生じさせると考えられています。

慢性胃炎の場合、胃の中の酸が高くなっている過酸性と低くなっている低酸性があり、前者では胸やけ、げっぷ、胃部の鈍痛などが主な症状です。後者は、脱力感、衰弱、疲労を訴えることが多く、下痢気味にもなります。

急性胃炎は一般に治りやすい病気で、数日あれば軽快することが多いのですが、慢性胃炎は治りにくく、対策が難しくなってきます。したがってここでは、慢性のケースを中心に、治療のため重要なカギを握る食生活の改善、つまり食養について述べてみることにします。

■絶対避けたい食品類

前述のように、慢性胃炎の場合、過酸性と低酸性があり、食養も分けて考える必要があるかもしれません。しかし、わたしが師事した日野厚医博の「日野式食養法」ではさほどの区別はしていません。というのも、胃だけを問題にするのではなく、身体全体の健康度の向上を第一に考えるためです。

慢性胃炎の人の食生活で何より大切なのは、胃を刺激し負担をかける食品を避けることです。熱すぎ、冷たすぎる食品、強い酸味や塩辛いもの、そして香辛料の効いたものなどは避けます。また、アルコール飲料と炭酸飲料のような嗜好飲料はご法度です。

食品では、脂っこいものは、胃に留まっている時間が長いので避けるようにします。具体的には、肉の脂身、ラードを用いた揚げ物、炒め物は好ましくありません。

魚は白身を選びましょう。必須脂肪酸を豊富に含む植物油やゴマは摂りたい食品ですね。タンパク質を摂るには大豆製品がお奨めです。

何より肝心なのは、よく噛んで食べることです。加えて、胃腸症状の改善が期待できる還元水の飲用もいいかもしれません。

わたしが勤務していたころの松井病院「食養内科」では、食生活の指導だけでなく、日野博士の指示で慢性の患者にも「絶食療法」を実施することがありました。最後にこの療法を紹介してみます。

絶食療法では、胃の組織の再生や身体全体の健康度の向上が期待されます。というのも、絶食を機に、その後の食養が順調にいけば、当然、身体全体によい効果があるからです。

ただし、絶食後に体調がよくなると、食欲が高まって過食に至り、体調が悪化して絶食前より症状が悪くなる恐れがあります。患者はこの点をよく理解し、強い意 志を持つ必要があるのです。

Global E-Friends 2020.9

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あなたのためのヘルスセミナー Vol.19

 健康を創る食生活とは?

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

第19回 食事療法で便秘&下痢に立ち向かう!

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

便秘と下痢と言えば、方や“出なくて”苦しみ、こなた“出過ぎて”苦しむ、という正反対の症状を示しています。そこで今回は両症状をまとめて取り上げ、食養でどう対処すれば良いかを考えてみます。まずは便秘から。

便秘の要因は大きく分けて二つあります。一つは症候群便秘と呼ばれ、腸狭窄や直腸ガンといった腸の病気に由来します。もう一つは、一時的または慢性状態の便秘で、前者は旅行先など環境や食事内容の変化等によって引き起こされ、後者は習慣性(常習性) 便秘とも呼ばれて、 大腸の機能異常が要因となります。

機能異常とはつまり、大腸の運動が減退して腸の内容物(大便)が長く停滞し、固く太くなって腸内移動ができなくなる症状のことです。これが習慣性便秘の大部分を占めていて、多くは下腹部に膨満感を覚えますが、長く続くと食欲不振や頭痛、倦怠感を訴える場合もあります。

習慣性便秘にはほかにも過敏性腸症候群の人に見られる「けいれん性便秘」と呼ばれる症状もありますが、ここでは省略します。

浣腸や下剤に頼らず、食養で便秘に対峙する方法は以下

①主食を、腸のぜん動運動を盛んにする繊維分を多く含む未精白米にする。②繊維分や、ビタミン、ミネラルを多く含む野菜・海草を積極的に摂る。③便を柔らかくし腸管の滑りを良くするゴマ油やオリーブオイル、亜麻仁油といった植物油を使う。④繊維分をほとんど含まず、ぜん動運動を緩慢にする肉類は避ける。⑤還元水などの水分を十分摂る。⑥身体を冷やす果物やぜん動運動が鈍る砂糖を摂りすぎないようにする。

■下痢のさいの食事療法

さてもう一方の下痢です。これは、大腸の運動が高じて腸内残存物が異常に早く通過するため、水分が腸内で吸収されず大便の水分含有量が増えて、泥状または水様状態となることです。急性と慢性があり、排便回数が一日に何十回にも及ぶこともあって、たいへん辛い症状です。

原因はさまざまです。果物や生野菜、消化に悪く脂質の多い食品やアルコール飲料、香辛料、砂糖等の多量摂取が引き起こすことがあります。そのほか、腸内での食べ物の異常発酵や、暴飲暴食、食中毒も要因になりますし、アレルギー性や神経性、さらに冷えによる下痢なども生じることがあります。

下痢が引き起こす症状も、発熱、倦怠 感、吐き気、腹部の痛み等々、実に様々ですが、高じている大腸の運動を正常に戻すためには、何といっても食生活の改善

が肝要です。

下痢で怖いのは、体液と様々なミネラル分が失われること。そこでこれらの補給が重要になります。野菜類は生を避け煮てから摂ることが大切です。油脂類では揚げ物や炒め物は避け、できるだけゴマ料理で摂取することが肝心です。

主食は未精白米をお勧めします。繊維分が多く下痢に不適当と思われるかもしれませんが、よく噛んで食べると、唾液の中のでんぷん分解酵素が働いて消化吸収を助けてくれます。食事療法とは別に、必要に応じ医師の管理下で実施する「絶食療法」という手段もあることを付け加えておきます。

Global E-Friends 2020.8

※あなたのためのヘルスセミナー
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あなたのためのヘルスセミナー Vol.18

 健康を創る食生活とは?

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

第18回 もはや“国民病”か? 糖尿病と戦う方法!

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

今回は糖尿病を取り上げてみます。厚生労働省の2018年「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」は男性18.7%、女性9.3%に上るとしています。

総務省の今年6月1日現在の人口概算値は男性6,129万人、女性6,464万人ですから、それぞれの比率をかけると1,146万人と601万人に達し、合わせて何と1,747万人! 糖尿病は、もはや国民病と言っても差し支えないでしょう。

ご存じのとおり、糖尿病は膵臓から分泌されるインシュリンというホルモンが不足・低下することで血糖値の上昇を招く病気です。

さらに糖尿病は、インシュリン依存型(I型)と同・非依存型(II 型)に分かれています。1型は比較的、若年層に多く、生命維持のためインシュリン注射が欠かせません。II型はもっとも普通にみられる糖尿病で、40代以上に多く、緩慢に発症し肥満を伴うことが一般的です。

もともと糖尿病になりやすい素質を持った人が、この病気の誘因となる過食、美食、運動不足といった生活をおくっているとてきめんです。なぜなら、食事量(カロリー)が多いとインシュリンの消費量が高くなり、肥満であるほどインシュリンの働きが鈍くなって、その不足・低下を招くからです。

放置しておくと、網膜症、狭心症、心筋梗塞といった血管障害や、糖尿病性昏睡、神経障害など、命に係わる重篤な合併症を引き起こします。糖尿病は、油断ならない病気なのです。

■食養で克服した72歳男性

ここで、松井病院・食養内科で指導をしたことのある患者さんの例を紹介してみましょう。身長160cmで体重60kgとやや小太りの男性 (72歳)。彼が糖尿病を発症したのは40代半ばで、以降、インシュリン注射と経口の糖尿病薬療法を実施してきました。また食事療法も実行していたと言います。

しかし症状は好転せず、入院時の血糖値は300mg/dl以上に達し、基準値の倍を上回っていました。そこで血糖値を下げて、かつその数値を維持するための食事療法を開始しました(補助手段として 運動療法も併用)。主な内容は、過食を避け摂取エネルギーを制限し、同時に栄養のバランスを保つことです。

具体的には、精白米を未精白米に切り替えて糖質を減らし、タンパク質は主に植物性食品である大豆製品から摂るようにしました。また動脈硬化を引き起こしやすいので動物性脂肪は極力避け、調理には不飽和脂肪酸が豊富な植物性油を用いました。ビタミンとミネラルは野菜と海草から摂取するように努めました。

入院以来20日間、このような食事療法を続けた結果、血糖値は下がり、コントロールできるようになって退院しました。以後、摂取エネルギーを一日1,600kcalまでに、との指示を良く守って薬剤も不要なまま過ごしていると聞きました。

わたしがつくづく思うのは、糖尿病ほど、食養の重要性を如実に示す病気はない、ということです。もちろんほかの病にとっても食事療法はとても大切です。でも糖尿病の場合、その治癒の可否は、ほぼ食事内容にかかっていると言ってもいいくらいなのです。

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第17回 この食事療法で高血圧に挑む!

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

日本にはいったいどのくらい高血圧患者がいるのでしょうか。厚生労働省が1980年から10年おきに実施している大規模調査「NIPPON DATA」の2010年版では、男女合わせて何と4,300万人が高血圧症としています。成人のほぼ2人に1人という高率です。

症状がない人も含め、高血圧状態にある人が驚くほど多く存在していることは間違いありません。放置しておくと、動脈硬化を引き起こすなど、重篤な状態に陥る可能性が高くなりますから、的確な対処が必須なのです。

そもそも高血圧はなぜ生じるのでしょう。最も多いのが「本態性高血圧」と呼ばれ、遺伝的に(親から)高血圧を受け継ぐパターンです。さらに食塩の摂りすぎなど、誤った食事が誘因になることもしばしばです。

したがって親が高血圧で、かつ塩分の多い食事を摂っているとすれば、ほぼ間違いなく高血圧になるといっても過言ではありません。

高血圧の症状としては、動脈硬化から来る頭痛、耳鳴り、肩こり、めまい、手足のしびれ等があります。また、物忘れや不眠症などの症状も見られます。高血圧状態が長期化すると、血液を送り出す心臓が肥大し、動悸・息切れなどを引き起こすこともあります。

さらに悪化すると、心臓ぜんそくや狭心症、心筋梗塞など、「死に至る」症状さえもたらすことがあります。さして症状がないからといって高血圧を放置しておくと、手痛いしっぺ返しに合うことになりかねないのです。

■ある肥満男性の奮戦記

松井病院・食養内科では多くの高血圧患者さんの食事指導をおこないました。たとえば身長167cmで体重79kgの肥満の男性 (54歳)。

来院する4年前に高血圧性心不全と動脈硬化と診断され、薬物療法を受けていました。しかしその後も、動悸や吐き気に襲われたり、疲れやすく風邪もひきやすかったり、といった症状に悩まされていたそうです。

検査の結果、軽度の心臓肥大や高コレステロールなどが認められました。また、 普段の食事内容を聞くと、肉類などの脂っこいものを好み、野菜や果物、海草は敬遠し、お酒が大好物で毎日2~3合は飲んでいたと言います。

入院と同時に、食塩を1日6gまでに制限する高血圧食を提供し、青汁を毎日200ml飲んでもらいました。すると4日後には血圧が最大110mmHg、最小84mmHgまで下がり、頭痛や肩こりが薄らいできました。

そこで10日後から2日間の減食に入り、続いて1週間の絶食療法を施しました。終了後は最大血圧104mmHg、最小血圧80mmHgとなり、諸症状も消失して退院の運びとなったのです。その後も、十分に養生し、血圧降下剤とは無縁の生活をしていると聞いています。

以下に、高血圧症患者向けの食養をまとめておきました。酸味をうまく使って塩分を抑制し、野菜を多く摂ることで空腹感を抑え過食を慎み、タンパク質は白身魚や植物性食品から摂る、といった食事内容が勧められます。主食も玄米等の未精白米や雑穀が望ましく、海草やシイタケなどもお勧めです。

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第16回 辛い貧血と戦う食事療法はコレだ!

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

貧血とは血液中の赤血球の中にあって、酸素を全身の細胞に運ぶ働きをしているヘモグロビン(血色素)が、基準値より減少した状態をいいます。このヘモグロビンをつくるのが鉄分であることは皆さん、ご存じのとおりです。さらにもう一つ「フェリチン」というタンパク質も貧血に大きくかかわっています。

ヘモグロビンとフェリチンの関係は「現金」と「預金」のようなものでしょうか。体内の約70%の鉄分は赤血球の中にヘモグロビンとして存在し、日々使われ(支払われ)て、残りはフェリチンとして主に肝臓の細胞の中に貯蔵(預金)されています。そしてヘモグロビンが不足すると、フェリチンがその補充のために登場するというわけです。

日本人女性の場合、半数が貧血およびその予備軍とされているほど多数に上ります。症状は、だるさ・めまい・不眠・ 頭痛・動悸・息切れ・吐き気・食欲不振等々、多岐にわたっています。

こういう貧血症状のほとんどは、ヘモグロビンの材料である鉄分の不足がもたらすので「鉄欠乏性貧血」と呼ばれ、貧血全体の約7割を占めています。

原因は多岐にわたります。女性に多いのが継続的な出血である生理による貧血。出血量が多いと重度の貧血になってしまうことがあります。

さらに、潰瘍、痔疾(かいよう、じしつ)などによる出血や、妊娠・授乳などで鉄分の補給が間に合わないことなども原因に挙げられます。あるいは、若い女性に顕著なのですが、無理なダイエットによる食事制限がもたらす貧血もあります。

■実践した「貧血食」の内容

重度の貧血の場合、輸血や薬物療法などをおこないますが、多くは、鉄分補給を含む食事のあり方がカギを握っているといえるでしょう。以下では、わたしが松井病院の食養内科で実際に指導した食養方法を述べてみます。

三十代前半で妊娠八カ月の主婦が、全身の強い倦怠感や手足の極度の冷えなどを訴え来診しました。検査の結果、「妊娠貧血」と診断されました。鉄の吸収障害や尿タンパクも認められ、軽い腎障害のあることも分かりました。入院と同時に「貧血食」を指示しましたが、胎児の発育も考慮する必要があり、1日にエネルギーは1800kcalでタンパク質は70gとし、食塩は5gに制限しました。

さらにゴマを1食に付き25gほど使用し、ニンジン汁200mlも摂取するようにしました。ゴマは鉄分だけでなく、良質な植物性脂肪とカルシウム、ビタミンB1の補給にもつながる重要な栄養素です。そのほかに漢方薬も服用してもらいました。

すると手足の冷えが次第に薄らぎ、強い倦怠感も緩和するようになって体力が付き、無事に出産することができたのです。産後の経過もよく、赤血球・ヘモグロビンともに正常値に戻りました。

「貧血食」には鉄分を多く含む、以下のような食材が不可欠です。煮干し、ゴマ、レバー、卵黄、海草、シジミ、カキ、緑黄色野菜など。そしてこれらの食材を、ほかの食材と共にバランスよく摂ることが肝要です。貧血と戦う最強の武器は、「正しい食養」なのです。

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第15回 激痛発作の痛風と戦うための食生活

児玉陽子 (食生活アドバイザー)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

児玉陽子 略歴:

1936年3月、台湾・台北市生まれ。 55年に皮膚病、59年に結核を発症。東邦大学病院の日野厚博士の指導により「日野式食養」を実践し快癒。 以来、食養研究を始め、69年から公益財団法人・河野臨牀医学研究所(東京都品川区)で食養指導を開始。 78年には日野博士と共に日本初の「食養内科」を松井病院(東京都大田区)に設けて食養指導を実施。95年、同病院顧問に。 現在はフリーランスの立場で、食生活についての指導・啓蒙活動をおこなっている。 主著に『臨床栄養と食事改善指導』『アレルギーにならないための離乳食』(いずれも緑書房)など。

痛風(高尿酸血症)は患者の90%以上が男性で、比較的中高年に多い病気です。原因は血中尿酸が増加して関節などに結晶化し沈着することで、血中尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。

数値が上がっても放置しておくと、ある日突然、足の親指の付け根などの関節が赤く腫れて痛みだします。それは激烈で、耐えがたいほどです。

ただし多くの場合、1週間から10日ほど経つと治まり、症状もなくなります。そこで油断していると同じような発作がまた起こってしまいますから、その前にきちんと対応する必要があるのです。

それを怠ると、今度は足首や膝の関節まで腫れはじめ、発作の間隔が次第に短くなってきます。やがてひどくなると、腎臓が悪くなったり尿路結石ができたりする場合もあります。放置はたいへん危険なことなのです。

この痛風には、プロシア国王フリードリヒ大王やフランスのルイ14世ら多くの王侯貴族が悩まされていたとされています。そのため古くから欧米では美食家、大酒家がかかる「帝王病」とか「ぜいたく病」などと呼ばれていました。痛風と食生活の関係はたいへん深い、ということは以前から理解されていたのです。

そもそも尿酸は人体内でプリン体という成分が分解してできます。そしてプリン体は肉類(とくにレバー) や甲殻類、ビールといった、「粗食」とは縁遠い食材に多く含まれているのです。

■アルカリ性食品の摂取を!

興味深いことに、日本では明治期まで痛風は「なかった」とする研究があります。実際に増えるのは戦後で、しかも

1960年代以降。これは明らかに食事内容が欧米化し、動物性タンパク質と脂肪分の摂取量が増えたことや、飲酒量の増加などによるものと考えられます。

わたしが実際に食養指導をした男性の中にも痛風の患者さんがいました。たとえば、当時58歳の会社経営者で軽度の肥満だったUさん。わたしが担当する5~6年前に痛風および高血圧症と診断され、血圧降下剤の服用と肉類を少なめにする、との指導を受けていました。

しかし右足のかかとが痛み出し、やがて歩けないほどの激痛に襲われました。その後も、足の親指やひざが痛み、便秘がちで食欲も減退。そこで松井病院・食養内科へ受診に来たのです。入院したUさんに食生活を聞くと、天ぷら、トンカツ、甘い菓子類が大好物で、あまり気にせず肉類を食べていたとのこと。

そこでまずプリン体を多く含む食品を避けるようにしました。さらに、尿酸は酸性になると結晶化しやすくなるので、野菜や海草などのアルカリ性食品を摂るようにしました。主食は玄米に変え、タンパク質は大豆製品で。青汁も飲用してもらいました。基本的には肥満防止に資する食事内容だったといえるでしょう。

尿酸排出促進剤と漢方薬も使った結果、入院後1カ月で便秘は収まり、関節痛も徐々に軽くなって、2週間後に退院に至りました。その後も食生活に注意し、元気に過ごしていると聞きました。食生活の改善こそ痛風撃退の最大の武器なのです。

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